照らす順番

夜道で手元を照らすと、見たいものはよく見える。鍵穴も、鞄の底も、足もとの小さな段差も見つけられる。そのかわり、光の届く円の外側は、かえって暗く感じる。
明かりを増やせば、すべてが見やすくなるわけではない。手元のための明かりは、手元だけを選んで明るくする。何を確かめるために灯すかが決まっているから、照らされないものも同時に決まる。
仕事でも、急いで片づけたいことにだけ注意を集めることがある。そこは明るくなり、進んでいる実感も生まれる。しかし、少し離れたところにある別の用事は、見えなくなったわけではなく、明かりの外へ置かれているだけかもしれない。
暗がりをなくそうとして、すべてへ同じ強さの灯りを向ければ、今度は手元の輪郭までぼやける。明るくすることには、どこを暗く残すかを決めることも含まれている。
手元の用事を終えて顔を上げると、目が慣れるまで、周囲はしばらく何も見えなかった。けれども、少し待てば、明かりの外にあった道も、もとの形を取り戻していった。