或る世界

一個で全部なくなる

ひとつ取るたび、選べる世界が一種類ずつ消える

同じ菓子が五つ並んでいるなら、一つ取っても、その種類は皿に残る。減るのは個数だけで、次の人も同じものを選べる。

ところが、違う菓子が一つずつの皿では、一つ取ることが、その種類を全部なくすことになる。一個を食べただけなのに、数え方によっては、一個と全部が同じになるのだ。

残りを個数で数えれば、五個が四個になっただけである。種類で数えれば、五種類が四種類になった。減った数字はどちらも一なのに、後者では、もう取り戻せない味が一つできている。

同じものばかりなら、最後の一個になるまで、その種類はなくならない。違うものが一個ずつなら、最初の一口から、皿は少しずつ種類の少ない皿へ変わっていく。

一つ手に取った。空いた場所は一個ぶんにしか見えない。しかし、そこにあった種類は、もう皿のどこにも残っていなかった。