到着は歩いてくる

駅の広い通路を歩いていると、人の数が急に増えることがある。さっきまで床がよく見えていたのに、向こうからいくつもの足音が重なり、流れの幅がいっぱいになる。
その人たちが乗ってきた列車は見えない。ホームは壁や階段の先にあり、扉が開いた音もここまでは届かない。それでも、列車が着いたことは、人の波を見ればわかる。
一人ずつに尋ねれば、行き先も急ぐ理由も違うはずである。ところが、遠くから見ると、別々の人がひとまとまりになって押し寄せる。誰も歩調を合わせていないのに、同じ扉から解き放たれた時間だけが、足取りをしばらく揃えている。
やがて流れは細くなり、床の模様が戻ってくる。駅が空いたのではない。次の列車が、まだ見えないところを走っているだけである。
立ち止まっていると、また遠くの階段から人が増え始めた。列車の姿より先に、到着した時間がこちらへ歩いてきた。