大声の平均

店が並ぶ通りでは、一軒だけ大きな看板を出せばよく目立つ。遠くからでも名前を読め、初めて歩く人の足を止められる。
ところが、その方法がうまくいくと、隣の店も看板を大きくする。向かいの店は灯りを増やし、別の店は文字を太くする。しばらくすると、一軒だけが大きかった通りは、すべての店が大きな声で名乗る通りへ変わる。
誰も小さくなってはいない。以前より明るく、文字も読みやすい。それでも、店同士の目立ち方は元とあまり変わらない。全員が一歩前へ出たために、新しい一列ができただけである。
同じことを続ければ、もっと大きく、もっと明るくするほかなくなる。目立つための工夫が、いつの間にか、目立たないためにも必要な最低限へ変わっていく。
通りを抜けて振り返ると、最初に大きいと思った看板を、すぐには見つけられなかった。小さくなったわけではない。周りが同じところまで育ったために、大きいことが、ただそこに並ぶための条件へ変わっていた。