作者のいない表紙

街の箱や柱にステッカーが増えていくとき、全体の出来上がりを考えている人はいない。一人は空いた場所へ貼り、別の一人は古い紙の端へ少し重ねる。それぞれが自分の一枚だけを置いて去っていく。
後から貼られたものは、前にあった絵や文字を隠す。しかし、全部を覆うわけではない。耳だけ、文字の半分だけ、剥がれた色だけが残り、新しい一枚の一部になってしまう。
誰も全体を描いていないのに、通りすがりには一つの面として見える。合作と呼ぶには、互いの相談も同意もない。それでも、一人では作れなかった重なりである。
完成を決める人もいない。空いている場所がなくなれば、次の一枚は上へ貼られる。表紙のように見えても、その下には別の表紙が何枚も眠っている。最後の作者が現れないまま、街は何度も上書きされていく。