降りなかった街

列車が駅へ着いても、降りなければ、その街にいたことにはならない。扉が開き、ホームの名前を読み、人が入れ替わるのを見ても、こちらの足は車内の床に残っている。
降りる駅なら、階段を探し、改札を通り、地上へ出てから道を選ぶ。降りない駅には、その続きがない。見えるのは向かいの壁と、扉の前を横切る人だけである。
それでも、まったく通らなかったわけではない。列車はそこで止まり、数十秒ぶんの時間を使った。街の側から見れば、私は到着した人ではなく、閉まる扉の内側にいた一人だった。
発車の音が鳴ると、ホームの名前は窓の外へ流れた。目的地にしなかった場所は、知らない場所のままではある。しかし、知らなさにも、通過したことのある形と、名前さえ見たことのない形があるらしい。