色は証言しない

古い白黒写真を見ていると、写っていない色まで見えたような気になることがある。空は青く、木の葉は緑で、祝いの日の服なら明るい色だったに違いない、と。
写真が残したのは明るさの違いだけである。それなのに、見る側は知っている色を空白へ戻していく。空と葉なら迷わない。だが、花や服になると、同じ濃さの灰色にも赤や青や黄色が入りうる。
色を補うことは、失われたものを取り戻すことに似ている。しかし、実際には記録を直しているのではなく、自分の知識や好みを置いているだけなのかもしれない。
しばらく眺めてから目を閉じると、写真にはなかった色が一つ浮かんだ。もう一度目を開いても、灰色はその想像を肯定も否定もしない。記録が黙っているところで、記憶だけが鮮やかになっていた。