雨の日の肩幅

傘を開くと、人は少しだけ大きくなる。身体の肩幅は変わらないのに、通り抜けるために必要な幅は、左右へ大きく張り出す。
狭い道ですれ違うとき、互いに肩を引くだけでは足りない。片方が傘を高くし、もう片方が少し傾ける。二人の身体は触れなくても、傘の縁が先に相手の場所へ入っていく。
乾いた道なら、ぶつからなかった距離である。それなのに傘同士が軽く当たると、持っている人が謝る。自分の身体ではないものまで、自分の大きさとして引き受けているらしい。
鞄を背負えば背中が厚くなり、大きな荷物を持てば曲がり角が遠くなる。人の幅は、皮膚のところで終わっているわけではない。そのとき持っているものによって、周囲へ頼む余白も変わる。
雨がやみ、傘を閉じると、道は急に広くなった。人が減ったのではない。全員の肩幅が、元へ戻ったのである。