煙草は二度読める

同じ言葉でも、平仮名で見ると、意味までまっすぐ届くものがある。「たばこ」と読めば、箱に入って売られている品物がすぐに浮かぶ。
漢字で「煙草」と書くと、途中で一度、煙と草に分かれる。読んでいるものは同じなのに、火をつける前の葉や、消えたあとの匂いまで連れてくる。意味へ着くまでに、少し遠回りをするのである。
声に出せば、どちらも同じ音になる。煙も草も発音されず、平仮名の丸みも聞こえない。文字の上にだけあった二本の道は、口を離れたところで一本に合流する。
言葉には、意味へ早く着く道と、途中の景色を残す道があるらしい。どちらを通っても同じものを指す。しかし、声になるまでに見てきたものまで、同じになるわけではない。