或る世界

仮の名前は三桁

名前を預けても、待つ時間だけは一人分ある

受付で番号札を渡されると、自分の名前が一つ増えたような気がする。もちろん本名が変わるわけではない。それでも待っているあいだは、呼ばれる数字の方へ耳がよく反応する。

番号には、その人のことが何も含まれていない。年齢も、仕事も、ここへ来た理由もわからない。ただ、誰が先で誰が後かだけを示している。その何もなさが、名前を大勢の前で呼ばずに済ませてくれる。

ところが、似た数字が読み上げられるたび、何人かが同時に顔を上げる。自分ではないとわかると、またそれぞれの姿勢へ戻る。番号は人を区別するためのものなのに、聞き間違える短い瞬間だけ、知らない人たちを同じ一人にする。

やがて自分の数字が呼ばれ、札を持って立ち上がった。窓口まで歩けば、その番号の役目はほとんど終わる。次に同じ札を受け取る人がいても、そこに私の続きはない。

本名より短く、用事よりも短い名前だった。それでも、呼ばれるまでの時間だけは、その三桁が確かに私を指していた。