空白は共同作品

対戦ゲームでは、置いた駒の色を見れば、誰のものかがわかる。自分が広げた場所と、相手に取られた場所は、最後まで別々に数えることができる。
ところが、盤の上に残った空白には色がない。誰も置かなかった場所なのだから、誰のものでもないはずである。それでも、その形を作ったのは一人ではない。
こちらが角へ伸ばしたために相手は曲がり、相手が細い道を塞いだために、こちらは小さな駒を差し込んだ。その繰り返しの間に、どちらの駒も入らない隙間ができる。最後まで使われなかった場所にも、全員の手順が残っている。
二人で暮らしていると、所有者を決めにくい空白が増える。棚の何も置かない一段、互いに予定を入れなかった時間、言わないままにした話。どちらかが作ったのではなく、片方の動きにもう片方が応じた結果、その形になっている。
駒は色ごとに箱へ戻せる。しかし、盤に残った空白だけは分けて持ち帰れない。誰の得点にもならない形が、対局のいちばん正確な共同作品に見えた。