固いまま

あとで落ち着いてやろうと思っているうちに、同じことが少し難しくなる。時間が減るからではない。取りかかるために使えたはずのものが、待っているあいだに失われるからである。
焼きたてのパンにのせたバターは、すぐなら軽く押すだけで広がる。先に珈琲を飲み、別のことを話してから戻ると、パンもバターも冷えている。丁寧に塗ろうとするほど表面が削れ、最初より手間がかかる。
先延ばしにした仕事でも、似たことが起きる。思いついたときには言葉があり、話した直後には相手の表情を覚えている。整った時間を待つうちに、使えたはずの熱が先に消えてしまう。
待てば、もっと上手にできるとは限らない。雑でも熱のあるうちに触れた方が、きれいに広がることがある。
冷えたパンの上で、バターは最後まで小さな塊を残した。塗り方が足りなかったのではなく、始めるのが少し遅かったのだ。