一本道の寄り道

一本道なら、迷わず早く着けると思う。曲がり角がなければ地図を見る必要もなく、前へ歩き続ければよい。
ところが、店の多い通りでは、身体は前を向いたまま、何度も横へ引かれる。果物の値段を見て足が緩み、知らない料理の名前を読み、積まれた箱の中身を確かめる。道から外れてはいないのに、歩く時間だけが膨らんでいく。
寄り道には、本来、行くべき道からそれるという意味がある。しかし、一本道の途中にも寄り道はできるらしい。方向を変えなくても、注意が横へ動けば、その数だけ小さな脇道が生まれる。
急いで通り抜ければ、入口から出口までの距離は短い。立ち止まりながら歩けば、同じ道がずっと長くなる。地図に描かれた線は変わらないが、店先で使った時間は線の外側へ少しずつ張り出していく。
結局、一度も角を曲がらないまま、思っていたより遅く着いた。どこを通ってきたかと尋ねられれば、一本の道しか答えられない。それでも、寄り道はいくつもしてきた気がした。