知らない伝言役

電話で話していると、声は相手の耳へ直接届いているような気がする。こちらが笑えば、少し遅れて向こうも笑う。その間に何があるかを考えることはほとんどない。
実際の声は、いくつもの機械へ渡されている。どの機械も、話の意味を知らない。冗談なのか謝罪なのかを区別せず、声を細かな信号に変え、次の場所へ送る。伝言役は一言も理解しないまま、聞き漏らしのないよう働いている。
人に伝言を頼めば、意味を知ることで言葉が少し変わることがある。丁寧に言い直したり、重要でないところを省いたりする。しかし機械は、何が大切かを決めない。大切でない咳払いも、言い淀んだ間も、同じように運ぶ。
通話を終えると、相手の声だけが記憶に残った。途中で受け渡した無数の伝言役を、私は一つも知らない。向こうも私たちの会話を知らない。その無関心さのおかげで、声は声のまま届いたのだろう。