食べられない部分

輪の形をしたものを端から食べると、食べ物と一緒に中央の穴も少しずつ小さくなる。穴そのものを口へ運んだわけではない。それでも、周りが欠けるたびに形を変え、最後にはなくなってしまう。
穴は食べ物の一部ではない。重さも味もなく、皿に残すこともできない。しかし、その何もない部分がなければ、輪という形にはならない。食べられないものが、食べ物の姿を決めている。
半分ほどになると、穴はもう穴と呼べない切れ込みになる。さらに一口進めれば、ただの曲がった端になる。食べ物は減った量で数えられるが、穴がどれほど減ったかを数える人はいない。
最後のひとかけらを食べると、皿の上から食べ物が消えた。同じ瞬間に、食べていない部分も消えたはずだった。腹に入ったものの中には、あの穴だけが含まれていない。