代表のない一口

料理を一口食べたあとで、味を尋ねられることがある。たいていは、その一口を皿全体の代表にして、甘い、辛い、好きだ、と答える。
しかし、いくつもの具が混じったものでは、匙を入れる場所によって一口の中身が変わる。最初は甘い果物だけ、次は少し酸っぱいもの、その次は液体ばかりになる。一口ごとの違いが大きいほど、どれを料理全体の味と呼べばよいのかわからない。
人は、最初に出会った一部分へ、全体を説明する仕事を任せがちである。一度話したときの印象、一度歩いた街の雰囲気、偶然読んだ一頁。それが間違いとは限らないが、別の場所へ匙を入れれば、違うものがすくい上がるかもしれない。
二口目を食べてから、最初の感想を少し言い直した。さらにもう一口食べると、また別の味がした。器が空になるまで、代表を決めるのは後にしておくことにした。