一匹ぶんの目

大きな魚を食べるときは、一匹の魚を食べたと言う。切り身になっていても、頭や尾がなくても、もとは一匹だったことを思い浮かべることができる。
ところが、小さな魚になると数え方が変わる。一匹、二匹ではなく、一匙、一皿、あるいは何グラムという量になる。一匹ずつに目があり、同じだけの輪郭があるのに、口へ運ぶときには、まとめて一つの味として受け取っている。
同じ種でも、大きさによって取り除いたり、そのまま飲み込んだりする。そこで変わるのは、口の中での扱いである。小さな魚は、口へ入る前から数え方が変わる。数えなくてよいものになり、一つずつを見分ける必要のないものになる。
箸の先で一匹だけを取ろうとすると、隣の数匹もついてきた。分ける理由もないので、そのまま口へ運ぶ。器の中身は一口ぶん減ったが、何匹食べたのかは、もうわからなかった。