触れなかった時計

長く触れていないものには、触れなかった時間が目に見える形でたまる。埃だけなら、いつからそこにあるのかわからない。しかし、蜘蛛の糸が取っ手から隣の柱まで渡っていると、そのあいだ誰の手も通らなかったことだけはわかる。
最後に触れたのがいつだったか、思い出そうとしてもはっきりしない。少し前だった気もすれば、ずいぶん長く放っていた気もする。使わなかった時間は、何も起きなかった時間だから、記憶に目印が残りにくい。
蜘蛛の糸は正確な時計ではない。張られた時刻も、作った蜘蛛がまだいるのかもわからない。それでも、糸が切れずに渡っている長さだけ、ここには手の届かない時間が続いていた。そのことを、記憶より確かに示していた。
布を持って器具へ触れると、糸は音もなく切れた。埃を拭けば、長く触れなかった跡はほとんど消える。だが、きれいになったことは、放っていた時間まで短くするわけではない。布の端に残った一本の糸を見てから、器具を元の場所へ戻した。