或る世界

二つの片手間

手を止めたところで、味と文章が重なって残る

本を読みながら何かを食べれば、二つの楽しみを一度に済ませられると思う。しかし、頁をめくる手と匙を持つ手は、意外に仲が悪い。

片方の手で本を開いたままにし、もう片方で食べる。頁の終わりまで来ると匙を置き、紙をめくり、また匙を取る。そのたびに文章は途切れ、口の中の味も少し遠くなる。

読みながら食べているつもりでも、実際には短い読書と短い食事を交互に繰り返しているだけなのだろう。二つを同時に進めようとすると、どちらにも小さな待ち時間が生まれる。

しばらくして本を伏せ、食べる方を先に終えた。急いで二つを済ませるつもりだったのに、一つずつするより長くかかった気がする。読み直した頁には、匙を置いたところの一文だけが、味と一緒に残っていた。