或る世界

汚れる道具

きれいにするほど、道具には汚れが移っていく

掃除道具を買い替えるとき、古いものをどこまできれいにしてから捨てるべきか迷う。汚れを落とすための道具なのだから、汚れているのは当然である。それでも、そのままごみ袋へ入れるのは少し乱暴な気がする。

新しいブラシは、使う前がいちばんきれいだ。一度こすれば毛の間に汚れが入り、役目を果たすほど、売り場にあった姿から遠ざかっていく。

普通の道具なら、手入れをして長くきれいに使うことができる。しかし、掃除道具の汚れは、働いた跡でもある。汚れないように使えば、たぶん何もきれいにはできない。

古いブラシを水で洗うと、完全には戻らなかった。新品のようにならないから捨てるのに、捨てる前だけ新品へ近づけようとしている。その矛盾がおかしくなり、最後に水を切ってから、ごみ袋へ入れた。