まだない席

指定席の切符を持っていると、列車がまだ来ていなくても、すでに座る場所があるような気になる。ホームには線路しか見えないのに、切符には号車と席の番号が印刷されている。
自由席なら、扉が開いてから空いている場所を探す。指定席なら、誰かに先に座られているかもしれないと心配する必要はない。その安心のために買っているのは、座席そのものより、席を探さなくてよい未来なのかもしれない。
もちろん、予定された列車が来なければ、番号の付いた席も現れない。約束は、実物より先に存在できるが、実物の代わりにはならない。それでも私は、切符を何度か見直した。確認するたび、まだない椅子の輪郭が少しはっきりする。
やがて遠くに二つの灯りが見えた。列車がホームへ入る前から、私はまだ見たことのない自分の席へ向かって、少しだけ体の向きを変えていた。