座る前の一口

料理を作っている途中で味見をするとき、その一口を食事のうちに数えることは少ない。焼け具合を見るため、甘さを確かめるため。どれも調理に必要な作業ということになる。
しかし、端を少しちぎり、もう一度だけ確かめているうちに、空腹は静かに小さくなっていく。皿を運び、椅子に座る頃には、最初に感じていたほど腹が減っていない。
食事は、席に着いて「いただきます」と言ってから始まるものだと思っていた。ところが、作る側に回ると、始まりはもっと曖昧である。香りを確かめ、指についたものを舐め、形の悪い端を先に食べる。そのどこかで、朝食はもう始まっている。
椅子に座ってから食べた分だけを見れば、少し物足りない朝食だったかもしれない。だが、台所で待ちきれずに食べた一口まで思い出せば、量はちょうどよかった。