或る世界

写真のない日

写真を一枚も残さないまま、一日が終わった。撮りたいものがなかったわけではない。机の上の湯気も、帰り道の雲も、画面を開く前には少し気になっていた。それでも手を伸ばさないうちに、どれも過ぎていった。

写真は一日を後から形にする。では、写真のない日は形がないのだろうか。思い出せなくなる細部はあっても、形が残らないことと、何もなかったことは同じではない。

日記には、写真を撮らなかったことだけを書いておく。空白を埋めるためではなく、空白にも時間があることを忘れないために。