橋の全景

一日を過ごしている最中に、自分がどんな形を作っているかを考えることは少ない。目に入るのは、いま踏んでいる場所と、少し先の行き先くらいである。
しかし、橋の上にいる人には、橋の全景は見えない。目に入るのは足元の舗装や欄干や、少し先を歩く誰かの背中くらいだろう。自分が一本の橋を渡っていることは知っていても、それが夕空にどんな線を引いているかまではわからない。
写真を撮ったとき、目で追っていたのは橋を行く人影だった。あとで画面を見ると、人より先に、空を二つに分ける橋の線が目に入った。同じ場所に立っていたはずなのに、少し時間を置いただけで見えるものが変わっていた。
日記も、それに似ているのかもしれない。一日を過ごしている最中には足元しか見えない。書いて残し、少し遠くから読み返したとき、その日が空に引いていた線を初めて知る。
人影は一人ずつ木の陰へ消えていった。橋だけがしばらく、夕空を横切っていた。